沖縄県産「バニラ」とは?
今回使用しているのは沖縄・読谷村(よみたんそん)でつくられたバニラです。繊細ですっきりとした香り立ちで、一緒に使われている素材の風味を引き出してくれるやさしさが特徴です。
今回の“つなぐつづく”シリーズは沖縄県産の「バニラ」を使ったプリンです。
私たちが出会った素材・沖縄県産「バニラ」に込められた想いについて、
読谷テロワール株式会社の當山さんと長浜さんにお話をお聞きしました。
今回使用しているのは沖縄・読谷村(よみたんそん)でつくられたバニラです。繊細ですっきりとした香り立ちで、一緒に使われている素材の風味を引き出してくれるやさしさが特徴です。
2023年に設立、テロワールとはその土地の地理や気候によって生まれる作物の特徴「産地特性」を意味する言葉で、読谷村の温暖な気候や風土を活かした作物づくりに取り組む会社です。バニラをはじめバナナやマンゴー、ランなどの栽培を行っています。
読谷テロワールがある読谷村は、沖縄本島の中部。暖かな風が吹き、南国の情緒が感じられるエリアです。
お菓子作りなどに香りづけとして用いられるバニラフレーバーは、バニラのつるに実る鞘(さや)のような「バニラビーンズ」から作られますが、このバニラビーンズはマダガスカルをはじめとした海外産のものが主流。パティシエの経歴ももつ當山さんは、ふるさとである読谷村で長浜さんが育てるバニラに出会い、その魅力と可能性に魅了されるとともに「このバニラを自分でも栽培したい」と強く感じ、長浜さんとともにバニラ栽培を行う道を選んだのだそうです。
「海外産のバニラビーンズは木や花の香りなどを含み、複雑な香りが重なる印象です。一方、国産のバニラビーンズは香り成分であるバニリンの香りがすっと一本通ったような、シンプルで繊細な香り。お菓子に使っても他の素材の邪魔をせず、それぞれの素材のおいしさを引き出してくれます。
現状、国内で流通するバニラは海外産が主流のため、経済状況によって価格変動が起こることも少なくありません。国産のものを増やすことで、製菓の現場でも香りや産地の選択肢が増え、お菓子のバリエーションがさらに豊かになるのではと思っています」と當山さんは国産バニラの可能性を話してくれました。
これまで海外からの輸入に頼ってきたバニラですが、安定した供給や価格の安定への足がかりとなる「国産化」への挑戦が始まりつつあります。そうした中で、読谷村は水はけのよい土壌に温暖な気候で、暖かい場所を好むラン科植物であるバニラに適しているため、冬でも化石燃料を使わずに栽培できます。さらに、冬には熱帯と異なり適度に気温も下がるので、花を咲かせるために「花芽」の先端をカットする作業も不要なため、バニラ栽培に挑戦する農園もいくつかあるのだそうです。
バニラの栽培の難しさは、なんといっても“授粉”の工程だと當山さんはいいます。
「バニラの花は自然には受粉しにくい構造なので、人間の手による“授粉”が欠かせません。ところが、バニラの花が咲くのは約一日。それも午前中に咲いて、お昼ごろにはしぼんでしまうほどの短時間なので、時間との戦いでもあります。とても繊細な作業のため、慣れないうちは花を傷つけてしまうこともあり、技術の鍛錬が必要です」
無事に実ったバニラの鞘は、数か月後に収穫され、徹底した温度・湿度管理のもとで「キュアリング」と呼ばれる発酵と乾燥の工程を経て「バニラビーンズ」として出荷されます。読谷テロワールでは機械を使わずに、手作業によるキュアリングを行っています。
また、生産者の顔が見える、収穫・生産量が安定すれば安定した価格で供給できる点など、国産バニラにはおいしさだけでなく、私たちのスイーツづくりに欠かせない「安全」と「安定供給」につながる可能性をも感じられました。
今回は読谷村で育ったバニラでプリンを作りました。意識したのは、バニラの香りをしっかりと活かしたスイーツに仕立てること。海外産のようにパンチのきいた“主役級”の甘さではなく、他の素材と一体になり、優しく感じられる甘さが国産バニラの魅力であることに改めて気づきました。乳と卵、そしてバニラのシンプルな構成だからこそ、その風味と国産バニラの繊細な香りが活きる、優しい口あたりのプリンに仕立てました。
読谷テロワールが目指すのは、おいしいバニラをはじめ読谷の農作物を作り広めること、そして高齢化が進む読谷村を「農」を通して元気にすること。
「読谷村産の作物の認知度がもっと上がれば、農業に可能性を感じる若い人も増えると思っています。そのためにバニラや野菜、果物などの栽培に取り組み、読谷村の作物をブランド化していきたい。ゆくゆくは、幅広い世代や様々な属性の人たちが働けるような雇用を生み出し、地域活性につながればと考えています」と、読谷の未来に思いを馳せる當山さん。
また、読谷村は観光やレジャースポットとしても人気のエリアなので「修学旅行の行先として訪れてもらえるような“観光農園”としての未来も考えているんです。子どもたちにバニラの授粉体験をしてもらうなど、私たちの取り組みを知ってもらえたらうれしいですね」と長浜さんも、読谷テロワールの将来像を語ってくれました。 バニラづくりを通して読谷村に寄り添いたい。お二人が語る読谷テロワールの未来は、生まれ育ったふるさとへの愛にあふれていました。
私たちは、そんな素材の魅力を発信できるスイーツをつくり、新たな素材についてたくさんの人に知ってもらうこと。今回の取り組みが、お二人の思いをつなげられるきっかけになることを願っています。
愛情をこめて育てたバニラを丁寧に加工し、やさしい香りが漂うバニラビーンズをつくる読谷テロワールの當山さん・長浜さん。
まだまだ希少な国産バニラの香りをプリンで楽しんでいただけるとうれしいです。
沖縄県・読谷村で育てられた希少なバニラビーンズから抽出されたバニラフレーバーを使用。
繊細で優しい香りを存分に楽しめるよう抽出したバニラフレーバーを使い、香りを楽しめるプリンに仕立てています。読谷村のバニラが持つすっきり優しい香りと、シンプルな素材でつくったプリンがお互いを引き立て合います。
バニラビーンズから抽出されたフレーバーを使用。一口食べた瞬間から、国産バニラならではの優しく繊細な香りが広がります。
クリームと一緒に口の中で優しくとろけるようななめらかさを大切に仕立てました。卵黄を多めに配合することで柔らかさとコクも感じられる、リッチな味わいのプリンに。
プリンとクリームの両方にバニラの香りをつけ、どこから食べても香りがしっかりと感じられる商品に。素材のおいしさを引き立てるバランスで仕上げました。