石川県の「加賀棒茶」とは?
かつては捨てられてしまうことが多かったお茶の「茎」の部分を焙煎した、棒ほうじ茶のこと。加賀地域に由来する製法によって石川県で仕上げ・加工されたものを指し、県内でも石川県茶商工業協同組合に加盟するお茶屋さんだけが生み出せる、芳しい香りと自然な甘みを帯びた味が魅力です。
今回の“つなぐつづく”シリーズは石川県の「加賀棒茶」を使ったスイーツです。
私たちが出会った素材・石川県発祥「加賀棒茶」に込められた想いについて、
有限会社油谷製茶の油谷陽祐専務(以下、油谷さん)にお話をお聞きしました。
かつては捨てられてしまうことが多かったお茶の「茎」の部分を焙煎した、棒ほうじ茶のこと。加賀地域に由来する製法によって石川県で仕上げ・加工されたものを指し、県内でも石川県茶商工業協同組合に加盟するお茶屋さんだけが生み出せる、芳しい香りと自然な甘みを帯びた味が魅力です。
大正7年創業。「加賀棒茶」をはじめ上質なお茶の製造・販売を行う。製茶歴40年のベテランで三代目にあたる代表が自ら茶葉の選定に産地へ赴き、仕入れから加工・選別・焙煎・熟成の全工程を自社工場で行う、石川県宝達志水町の製茶会社です。今回はこの油谷製茶さんで作られた「油谷製茶加賀棒茶®」を使用しました。
加賀棒茶とは、伝統製法で仕上げた「棒ほうじ茶」のこと。棒茶とはお茶の葉ではなく茎の部分を使用して作られたお茶のことで、お茶が高級品だったころから庶民の食卓でも親しまれてきました。
「幕末から明治時代にかけては、国内で作られるお茶の8割ほどは海外に輸出されていたため、庶民が気軽に口にできるものではなかったといいます。そこで、お茶を作る工程の副産物として捨てられていた“茎”の部分に目をつけ、焙煎して売り出すようになったことが、加賀棒茶の始まりです。独特の香りと味わいで人気となりました」と、油谷さんは加賀棒茶の歴史を教えてくれました。
捨てられてしまう部分を「焙煎」という工夫でおいしいお茶に仕立てた先人たちの工夫。SDGsという言葉が生まれる120年以上前から、加賀棒茶に息づいてきたエシカルな価値観です。
加賀棒茶の特徴は、なんといっても芳しい香りとすっきりとした上品な味わいです。一般的な葉のほうじ茶よりも、茎を焙じた方が香ばしさは1.4倍※程度あり、クリアな味わいと、ナチュラルな甘みを感じることができます。
「加賀棒茶では、茎の部分だけを使用します。茶葉の甘みや栄養成分は茎を通って葉へといきわたるので、多くのおいしさが詰まっています」
実は、茎茶は収穫されるお茶全体から15%ほどしかとれない隠れた希少品。捨てられていたものを一転させてブランド化している点も、加賀棒茶の特筆すべき特徴のひとつです。
※参考: 『金沢の伝統食品「棒茶」の香気成分』.笹木哲也・道畠俊英・ 榎本俊樹.『かおり環境学会誌』vol. 46, no. 2, p. 133-139, 2015
棒ほうじ茶の製造に欠かせないのが「焙煎」の工程です。油谷製茶ではふっくらと仕上げる「遠赤外線」と、香りや味を引き出す「直火」のダブル焙煎技術によって、おいしい加賀棒茶を製造しています。「異なる方法でダブル焙煎を行っているのは、県内でも当社のみです。一番の良さは、茎の芯まで加熱する「遠赤外線」焙煎で得られる“軽やかな味わい”と、回転ドラムを使い「直火」焙煎することで得られる“香ばしさ”、どちらも引き出せるところにあります」
また、石川県は曇りや雨の日が多く、湿度が高い地域です。そのため、毎日の天気や温度・湿度に合わせて、火入れの時間も微妙に調整しているのだそうです。
「同じ材料で同じように火入れをしても仕上がりは変わりますので、日々積み重ねた経験がものをいう世界です。火入れは約3分、長くても5分ほど。取り出す時間が10秒違えば、全く違う仕上がりになります」。社長は焙煎歴40年のベテランで、油谷さんもその技を間近で見ながら試行錯誤を続けているそうです。
さらに石川県では、加賀棒茶を作る際に各地から仕入れた原材料(茎茶)を組み合わせる「合組(ごうぐみ)」を行っています。
「お茶の仕入れ先や年によって、出来具合も変わります。香りを出したいときは風味の豊かなお茶を合わせるなど、お茶を組み合わせて“その年にできる一番おいしいと思える加賀棒茶”を作れるのは、私たちの強みの一つかもしれません」
今回、そんな加賀棒茶のおいしさを存分に味わえるように考えたのが“わスイーツ”シリーズのスイーツです。
飲み物としても親しまれている棒茶の香りと味をスイーツに仕立てるにあたり、加賀棒茶ならではの優しく丸みのある香りをどのように引き出すかを心がけました。
油谷製茶の加賀棒茶を細かなパウダーに加工し、“わスイーツ”シリーズでは、このパウダーを使ってほうじ茶餡をつくりました。
「飲料としてはメーカーさんと一緒に商品を作ったりもしてきましたが、スイーツの材料として全国に流通するのは今回が初めて。石川県には『お茶の産地』のイメージはないかもしれませんが、製茶(焙煎)技術が根付いている地域です。スイーツをきっかけに加賀棒茶を手にとってくださる方が増えたらとてもうれしいですね。」
新たな飲料が次々と登場し、“お茶離れ”が進んでいるが、ぜひお茶の良さ、加賀棒茶の魅力を知ってもらいたい、と油谷さん。
2024年1月に発生した能登半島地震では油谷製茶さんも被災し、復旧に取り組まれるさなかでお話を伺いましたが、事業の再開に向けて希望を持たれ、たくさんの事をお話いただきました。
この地で育まれてきた素材の歴史やそのおいしさを、今回のスイーツを通じて楽しんでもらえればと願っています。
県内唯一のダブル焙煎製法で、おいしい加賀棒茶を製造する油谷製茶。
加賀棒茶のもつクリアな香りと、優しくしみわたるようなコク深い味わいを楽しんでいただけたらうれしいです。
油谷製茶のダブル焙煎によって香りとコクを引き出した加賀棒茶をパウダーに加工し、スイーツに仕立てました。
お茶との相性抜群の“わスイーツ”のしっとり生かすてらに。すっきりとした上品な味わいのほうじ茶餡にし、ほうじ茶パウダーと合わせてほうじ茶ペーストに。ふわふわのカステラ生地とミルククリームでサンドしました。加賀棒茶のすっきりとしたおいしさをご堪能ください。
丁寧に焙煎された加賀棒茶のおいしさをそのままに、パウダーに加工しました。このパウダーを使ってオリジナルの「ほうじ茶餡」に仕立てています。豊かな加賀棒茶の香りが楽しめます。
カステラの中にいれたほうじ茶ペーストは、加賀棒茶の豊かな風味とすっきりした味わいを楽しめるよう、ほうじ茶餡にほうじ茶パウダーも配合。生地やクリームに合わせてもしっかりと加賀棒ほうじ茶の味わいが楽しめるようにしました。
ほうじ茶ペーストの味わいを生かすため、ミルククリームには北海道産生クリームを入れて、乳味感がある味わいに。加賀棒茶のまろやかで、すっきりとした味わいのハーモニーが楽しめます。
油谷製茶のダブル焙煎によって香りとコクを引き出した加賀棒茶をパウダーに加工し、スイーツに仕立てました。お茶との相性も抜群の“わスイーツ”のどら焼き・たい焼きと、やさしい味のミルククリームと一緒にお茶の香りを楽しめるプリン。加賀棒茶のすっきりとしたおいしさをご堪能ください。
<販売期間>
■ふんわりどら焼・加賀棒茶/ふわもちたい焼・加賀棒茶
2024年7月1日~8月31日
■加賀棒茶プリン
2024年7月1日~7月31日
丁寧に焙煎された加賀棒茶のおいしさをそのままにパウダーに加工しました。どら焼き・たい焼きの餡は、このパウダーで仕立てたオリジナルあんこです。クリームやプリン、トッピングにもパウダーを使用し、豊かな加賀棒茶の香りが楽しめます。
「ふんわりどら焼・加賀棒茶」「ふわもちたい焼・加賀棒茶」はほうじ茶クリームと、ほうじ茶餡ペーストの二層仕立てに。クリームにもほうじ茶餡を加えることで、豊かなほうじ茶の香りを存分に楽しめるように仕立てました。
加賀棒茶のパウダーで仕立てた「加賀棒茶プリン」は、ほうじ茶の香りを活かすため、ミルククリームの甘さを少し控えめに。なめらかな口当たりのプリンは、ほうじ茶パウダーのクリアで香り高い味わいを楽しめます。