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洋菓子の原点を見なおせ!
もしくは、大阪のヨーロッパ

 
  • 2014.07.15

第3話 洋菓子の原点を見なおせ!もしくは、大阪のヨーロッパ

洋菓子の原点はどこに?

俺の名は成田竜。通称ドラゴン。モンテール 大阪発スイーツ開発部リーダーだ。
前回、おうどんの調査を通して、大阪が一筋縄ではいかない街だということを存分に思い知った。

その大阪で通用するスイーツを開発することがこの俺と、俺のチームのミッションなのだ。

思いも新たに、今日も作戦会議。

「大阪はまがいものが通用しない街だ。小手先ではなく本質。洋菓子の原点を見つめなければならないと思うんだ」

俺がそう言うと、田中先輩が聞いた。
「洋菓子の原点を見つめる、か。いいね。で、それをどこで?」

俺 「ヨ、ヨーロッパかな(-o-;;)???」

田中 「まあ、そりゃそうだ。でも今すぐヨーロッパに行って洋菓子の原点を探る、なんてのは無理だよな」

確かにそうだ。今からパスポート片手にラピートに乗ってヨーロッパへGO!、というわけにはいかないだろうな。

そのとき、パティシエの井根が口を開く。
「あ、わたし知ってますよ。大阪にもヨーロッパがあるって」

大阪にヨーロッパ?そんなのあるのか?

「ありますって。わたし見ましたもん♪
ラピート乗らなくても行けるヨーロッパ(^o^)丿」

ヨーロッパ到着

井根に導かれるまま、半信半疑で、大阪にあるというヨーロッパに向かった。

御堂筋線心斎橋駅を降りて南に・・・。
ここまで来て、マーケティング担当の吉野が耳元でささやく。
「ねえ、井根ちゃん、もしかしてアメリカ村にでも連れて行くつもり・・・?」

うん。確かにこっちはアメリカ村の方角だ。
でもアメリカ村はアメリカ。決してヨーロッパじゃないよなぁ。

井根 「ついた!」

こ、ここは!!!
井根 「はい。ヨーロッパ村」

な、なるほど!!
ここはたしかにヨーロッパだ!

ヨーロッパの名所を次々発見!

レンガ造りの建物。ここがイギリス・霧の都ロンドンか?
田中先輩もどことなくシャーロック・ホームズっぽい。

細い石畳の路地が複雑に入り組む。ここはチェコのプラハか?ベルギーのブリュッセルか?

アイルランド最大の都市・ダブリンでパブと言えば、気の荒い、そして愛すべき男たちが一時の安らぎを得る場所。

ここにはヨーロッパの国旗が複数掲げられている!
ということは、ここはEU本部なのか?

そして、パリのポワン・ゼロ!?

本やテレビで見たものとデザインが違うのは、気のせいだろう。

【まめちしき】
説明しよう。
ポワン・ゼロとは、ノートルダム寺院近くにある、道に埋め込まれた「ゼロ地点」を表す標識だ。
これを踏むと、いつかパリに戻ってくることができるという言い伝えがあり、人気の観光スポットになっている!

そしてスペイン北西部・ガリシア地方といえばタコのガリシア風・・・。
そう、ゆでたタコにパプリカ、塩、オリーブオイルで味付けした料理。

っって、タコヤキやないかーい!!!

ちがう、ちがーう!!!!
ここはまったくの大阪じゃないか。

アメリカ村から御堂筋を挟んで反対側。
ヨーロッパ村周防町通り(すおうまちどおり)というところらしい。イギリスでもベルギーでもなかった。

なぜここがヨーロッパ?

でもどうしてここをヨーロッパ村って言うんだろう?
気になる・・・。誰か知ってる人はいないかな?
街の人に声をかけてみた。

・・・・・。

きょとんとされてしまったが、誰に話を聞けばよいのかはわかった。
ヨーロッパ村周防町通り商店会の松村博会長だ。

すみません、私、成田竜と申します。ドラゴンと呼んでください。
早速なんですが、どうしてここをヨーロッパ村って呼ぶのですか?

「4、50年くらい前かなあ。この心斎橋の辺りは倉庫が立ち並んでて、当時の若い人たちがその倉庫前で商売を始めたんやな。三角公園の近くにはピザやらコーラを出す、当時ではほんまに珍しい店もあって、いつの間にか『アメリカみたいやなあ』ゆうて『アメリカ村』て呼ばれるようになったんや」

ふむふむ。

「それとおんなじくらいの時期に、周防町通り近くに『英國屋(えいこくや)』ゆう本格的な喫茶店ができて、あっちがアメリカ村やったらこっちはヨーロッパや、ゆうことでこの辺を『ヨーロッパ村』て呼ぶようになったんや」

「その後、1983年に街の大規模な改修があって、パリのサントノーレ通りをイメージした、石畳と街灯がある今のヨーロッパ村(ヨーロッパ通り)ができたゆうわけ。その頃はおしゃれで個性的なヨーロッパのファッションブランドなんかが軒を並べてたんやけど、今は飲食店なんかも多いなあ」

(=゜ω゜=;) なるほど!

そうだったんですか。
ありがとうございました。

で、洋菓子の原点はどこに?

いやいや、すっかりヨーロッパを満喫した。
おみやげも買ったし、ヨーロッパ最高!
大阪というと「コテコテ」なイメージが強いが、ヨーロッパ風の小洒落た粋な感じもまたよく似合う。

と、開発部の拠点に戻ってきた。

今回留守番だった鈴木課長が「おかえり!」と出迎えてくれる。

「で、洋菓子の原点は見つかった?」

も、もちろんですとも(゜o゜;

「じゃあすぐにでもスイーツの案、書けるね?明日までに30本よろしくー」

しまったー!!!!!