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大阪発スイーツを開発せよ!
もしくは、筋の名前2014

 
  • 2014.06.19

大阪発スイーツを開発せよ!もしくは、筋の名前2014

プロローグ ~運命の電話~

それは1か月前のこと。

外回りから大阪営業所に戻り、夕暮れの江坂の街並みを眺めているとき、一本の電話が鳴った。

「成田君。大阪発スイーツの開発リーダーをやってくれ」

声の主は、東京本社の「偉い人」だった。

「私たちは西日本における認知度をもっと上げねばならん。そのためにも、まずは大阪だ! 美味いものがたくさんある大阪で通用するかどうかが、我々の将来を握る鍵になる。そこで、大阪の人たちに受け入れられる限定スイーツを開発してくれ。それがキミのミッションだ」

成田竜。26歳。ドラゴンと呼ばれた男。
2013年にモンテール大阪営業所が開設されたとき、自ら志願してここに来た。
いよいよ、この俺の大阪への愛と熱意を見せるときが来たようだ。

責任の重大さに武者震いする俺。
受話器の向こうで、「偉い人」の声がかすかに聞こえた。

「あ、それと、キミがリーダーだと不安だから、見張り役を鈴木課長に頼んだから」

開発メンバー、大阪に降り立つ

今日は、東京の開発メンバーが、現地のリサーチに来る日。
重要なミッションだから、これからの活動はすべて「偉い人」に報告する必要がある。

カメラマンは俺の上司、鈴木課長が引き受けてくれた。

新幹線から降り立ったメンバーたちも緊張の面持ち。

まずは大阪の拠点・江坂の営業所で作戦会議だ!

皆を案内するのは、リーダーの俺だ。

「へえー。御堂筋って電車の名前なんですかぁ」
と、メンバー最年少、パティシエの井根。

よし、俺が大阪通というところを見せてやろう(`~´)

「いや、筋というのは道のことなんだ。御堂筋という道の下を通っている地下鉄だから御堂筋線という名前だったはず」

そこにマーケティング担当の吉野が口を出してきた。
「りゅうちゃん、よー知ってるなぁ。ついでに言うと、谷町筋の下は谷町線、今里筋の下は今里筋線・・・」

ううっ ∑@( ̄□ ̄;)@、この俺よりも大阪に詳しいところを見せつける。ここでリーダーの面目を見せなければ。。。

「りゅうちゃんじゃない。ドラゴンと呼んでくれ・・・」

大阪の常識とは!?

井根 「え?道のことスジっていうんですか?」

吉野 「せやで。大阪では南北に伸びる道路には『筋』、東西に伸びる道路には『通り』の名前がついてんねん」

えー ━━Σ(゚Д゚|||)━━。そうなの?全部の道がそうなの?!

吉野 「全部が全部やないけど、大体そうやね」

知らなかった・・・。
大阪ではそれが常識なのか。大阪営業所にいながら、そこは盲点だった。
大阪の常識を知らずに大阪の商品開発などできるはずもない! よし、調べに行くぞ!

「ちょ、ちょっとリーダー、作戦会議はどうするんですか!?」
誰かが言ったが、筋問題が解決しないまま作戦会議をして、間違いがあってはならぬ。

われわれのミッションは大阪の人に愛される商品づくりだ。大阪人の思いがわかってこそ、そういった商品ができるというもの。
大阪の常識・筋問題を調べるため、われわれは一路、大阪の中心部へ!

現地リサーチ、本格始動

「リーダー、ここは?」

「千日前通だ。千日前通は大阪市内を東西に走る大通り。この通りを東に進みながら交差する道の名前を調べれば、南北に走る道が『筋』なのかどうか、わかるのさっ!」

井根 「さすがリーダー、あったまいい!」

まかせてくれ。俺はドラゴンと呼ばれた男。
まず、ここ「新なにわ筋」からスタートだ!

現地リサーチは、かくして始まった。

リーダーの立場、危うし

井根 「リーダー! 次の『筋』が見えてきましたよ! 『あみだ池筋』って書いてある!」

成田 「ああ、道路がアミダクジのように交差してるからついた名前・・・か(´д`)?」

吉野 「この道沿いのお寺に阿弥陀如来をまつった池があって、その池を『あみだ池』と呼んだことからついたんやで」

うっ。そういう言い伝えは知らなかった。吉野は京都出身だもんなー。
この調子じゃ、リーダーの面目が・・・(;´Д`)

いや、落ち込んでる場合じゃないぞ!がんばれ、俺!!
気をとりなおして、さらに東へ!

さっきのは「新なにわ筋」だったが、ここは「なにわ筋」。
ところで井根さん、なぜ泡だて器を?

次は・・・四つ橋筋!
上に見えるは橋。じゃなくて阪神高速湊町ジャンクションか。

そして・・・
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!

欧陽菲菲さんの歌で有名な御堂筋(みどうすじ) (・∀・)bbb

吉野 「オウヤン フイフイ?」
「1971年に『雨の御堂筋』がヒットした歌手さ。同じ年に『雨のエアポート』を出して、翌年には『雨のヨコハマ』ってのも出したんだよな・・・・」

そうつぶやいたのは、主任の田中先輩。
流行りモノに詳しい田中先輩とはいえ、1970年代のことまでなぜ知ってる・・・。

大阪最大級の繁華街を行く

さらに東へ行くと、大阪最大級の繁華街が見えてきた。

戎橋(えびすばし)筋だ。

さらに東に進む。またも大きなアーケードがあった。人が多い。

しかし、筋の名前は見当たらない。アーケードの入口には『千日前』と書いてあるけど・・・。

吉野 「ここは『千日前筋』という名前が付いてんねん。まっすぐ北に行くと『三休橋筋』に呼び方が変わんねん」

また完敗・・・ (>□<)!!

相合橋(あいおいばし)筋。また商店街だ。

続いて「堺筋」。
江戸時代、堺筋には砂糖問屋が多かったので「堺筋」が「砂糖」の代名詞のようになってたらしい(甘いもの大好きの井根さん談)。

そして文楽劇場の前を通り過ぎると、人形で有名な「まっちゃまち」こと「松屋町筋」。
鈴木 「へえ、文楽劇場のそばに人形の街か。大阪の歴史を感じるな」

相撲好きの町!?

しばらく行くと、ひときわ大きな交差点。

鈴木 「谷町筋・・・相撲の『タニマチ』と関係あるのか?」

キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

コレなら知ってる!知ってます!
「鈴木課長、このドラゴンがお答えしましょう。昔、この谷町筋の近くに熱狂的な相撲の支援者がいて、それ以来、相撲の支援者のことを『タニマチ』と呼ぶんです。」

どうだ!俺!! キタ!俺!!!!!

井根 「へえ。支援者って?」

うっ!さすがにそこまでは・・・。
と思ったのもつかの間、スポーツ全般に詳しい田中先輩が、

「諸説あるけど、明治の頃に谷町に相撲好きのお医者さんがいて、力士から治療費を取らなかったことから支援者を『タニマチ』と言うようになった、という説が有力だね」

ウープス!! も、もっていかれたー!!!!!!

スイーツと筋の密接な関係とは!?

その後、さらに東へ行き上町筋。(「かみまちすじ」じゃなくて「うえまちすじ」なのね)

玉造筋。このあたり、古墳時代に勾玉(まがたま)を作る玉造部があったとか。

そして・・・

最後、今里筋までやってきた!

今回は千日前通沿いコンプリートーーっ!
大阪にはこのほか「みてじま筋」「あべの筋」「天神橋筋」などがあるらしい。

大阪の道で、南北に走るものは「筋」!
またひとつ、大阪のことを学んだ。
これは今後の商品開発に生きてくるに違いない!!!!

ていうか疲れたー(o´Д`)=з・・・

井根 「リーダー、もう結構いい時間ですが、今から作戦会議ですよね?」
鈴木 「おまえら、コレどうやって会議に活かすんだよ。。筋は筋でも筋違いだぞっ。」

しまった!!!!夢中になりすぎたか!